日米卒業式考察

3月18日、私が住む町の日本語補習校で卒業式があり、英語を話す来賓向けの通訳として仕事をする機会がありました。

「卒業」ということに関しては以前、Graduation – 卒業で投稿をしましたが、今回は別の視点で見てみます。

diploma japan

http://shoujou-print.jp/shosho/sam_sotugyo.html#shosho3(卒業証書はこちらの画像を借りました。)

 

久しぶりに日本の行事に参加し、君が代を歌う場にいるなど何十年ぶりだったかなと思うほどでしたが、色々な発見がありましたので紹介したいと思います。

  1. 卒業証書

上の写真にありますが、まず卒業証書に違いがあります。日本のものには生年月日が書いてあるんですね。そんなことは今までまったく気がついていなかったのですが、校長先生が一人一人名前を言って、そのあと生年月日を言っているのを聞いてびっくりしました。普通は日本のものには入ってるんですね!

アメリカのものには学校の名前が上にどーんとあって、名前も大きく書かれますが、生年月日は入りません。

日本ではなぜ生年月日を入れるのでしょうね。アメリカでは日本のようにきっちり学年の切れ目がないので、同じ学年でも1年くらい年が違う子がいることもよくあります。その子の成長具合に応じて幼稚園に入れる時に早く入れたり遅らせたりするのがその理由の一つです。あとは州によっても切れ目が随分違います。7月末であったり、9月、年末であったりと色々なので、就学年齢に達する頃に他州からの引越しがあるとずれることがあります。なので、生年月日は重要視していない、ということでしょうか。

2. 卒業証書のもらい方

日本の場合、練習までして、どこで礼をして一歩出て、右手左手、証書をもらったらこっちに持って、一歩下がって礼、とか色々ありますよね。名前をよばれると「はい」と返事をして証書をもらって壇上から降りる。そして今回は、拍手もしないように言われていたので観客も静かにしていました。

アメリカでは証書をもらう手順などまったくなくどちらの手でもいいのでさっさともらい、握手をしてその場を去ります。名前を呼ばれると観客から歓声が上がります。

3. スピーチ

これは一番大きな違いです。日本の祝辞はよく季節のあいさつが最初にあります。卒業式といえば3月半ばから後半にかけてなので日本では季節柄春になりつつある時期です。しかし、ここオハイオではそういう時もありますが、今年のように違うこともあります。

「木々も芽吹き始め、ようやく寒い冬も終わりを告げ・・・」というような言葉が最初にあります。

しかし、今年のオハイオの場合、2月が異常にあったかかったため、草木は2月に芽吹いてしまったのですが、3月に入って零下の日が続き雪も降り、出た芽もかわいそうに枯れてしまいそうな感じです。

実際にはそうであってもそういう風に言うことが「常識」であるため、そのような言い回しが入ってきます。

冒頭の言葉が季節の話であるため、いきなり英語で

“Trees have started showing green buds…”などと言うことになり、面白いなーと思ってしまいました。

そして、今回私が一番目立つと感じたのは「周りの人への感謝の気持ちを忘れないで」ということを多数の人が言っていたということです。

これは本当にその通りで感謝の気持ちを忘れがちなアメリカの子供たちには聞かせたいことですが、それがスピーチのかなりの部分を占めているにもかかわらず、「最後になりましたが」ときて、何か違うことをいうのかと思えば、また「両親、先生方、〜の方々へお礼を申し上げ〜」ときます。

日本語で聞いていたらまったく違和感なく聞き流すことなのですが、こういうスピーチを英語にしているとどうもしっくりこないんですね。

何度も何度も “appreciation,” “thank you” などと言ってきて、また最後に同じ内容になってしまうのです。

日本語と英語のスピーチは構成が違うんですね。

アメリカのスピーチはどうかというと、もちろん卒業式を準備してくれた人々への感謝の気持ちは最初や最後に言うと思いますが、まずはおめでとうで、卒業生へのメッセージがあります。そしてジョークが入ることも多いです。

それに比べると日本のスピーチは本当に硬いですね。笑うことなどあり得ないですし、終わっても拍手もなく、礼をしその人が着席するまでシーンとしていて、皆緊張しっ放しでした。

これはやはりアメリカがスピーチ文化だからでしょうか。人前で話すことは大事なスキルですから、小学校から大した内容でなかったにしてもプレゼンテーションをしますが、日本ではまだまだ人前できちんと自分の意見を言う、ということに重点は置いていませんよね。

4. 送辞、答辞

これは日本特有のものだと思います。アメリカでは卒業生を代表してスピーチをする人は必ずいますが在校生が送り出す言葉を言うというのはないような気がします。

日本は一年違っても先輩、後輩と分けられているのでそういうことになっているのかこの由来はどこにあるのでしょうね。

アメリカでは先輩、後輩という観念がかなり薄く、年齢に関わらず皆同等に話します。

5. 服装

日本の子供たちは日本の学校の制服を着ている子もいましたし、スーツやワンピースを着ている女の子もいましたが、色はほとんどが黒か暗い色のものを着ていました。高校の卒業生が5人いたのですが、皆羽織袴でこれは私個人的には新鮮でした。

私の時代は中高は制服だったと思いますが、今は制服がある学校でも卒業式は華やかに装うのでしょうか。

アメリカでは小中の卒業式はほぼないに等しいので、卒業式といえば高校か大学になり、どちらもガウンと言われる長いものを着て帽子をかぶります。

このように一つの行事を見ても色々と違いはありますが、一言で言うと日本が堅苦しく型にはまっているということですね。しかし、これが日本の文化なんですね。将来的には変わっていくところもあるのかもしれませんが、卒業式ということでいうとアメリカの卒業式のようには100年かかってもならないでしょうし、逆にそうする必要もないのですね。効率よくしたいとかもっと楽しくしたい、とかこれからの人たちが思えばまた新しいスタイルが出てくるのかもしれません。

ある人の祝辞の中に、先ほど書いたように日本人は感謝の気持ちや他者を思いやる心が常にあり、それが強みであり、そのような日本人の良いところを持った上で、自分の意見をはっきり主張することが良いとされるアメリカでも教育を受け、他国をも理解できるあなたたちのような人たちこそ、これからの時代、グローバルな人材として活躍できる人材である、というところがあったのですが、本当にそう思います。

こちらで週日はアメリカの学校で学び、土曜日だけ日本語補習校で学び、日本にいる子供たちと同等に学ぼうとするというのは本当に大変なことで、私はいつも日本人駐在家庭のお子さんたちには感心しています。

苦労した一方、外国での暮らしはいい経験にもなっているはずなので、彼らのような帰国子女がこれからの日本に新しい風を吹き込み、日本、世界をリードする人の一人になっていってほしいなーと応援する気持ちになりました。

日米、卒業式の形式に違いはあってもうれしい行事であることに変わりはありません。卒業生の皆さん、おめでとうございます!

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2 Responses

  1. かぁちゃん says:

    前回の卒業でもコメントしましたが、今回も。
    日本が堅苦しく型にはまってる、としか言いようがないですかね。
    これまで自分を助けてくれた人たちに感謝する言葉はとても大切。
    だけどそれだけで終わるものでもない。
    やはり京子さんが書くように、こちらのスピーチ文化の賜物なのでしょう、こちらで耳にするウィットに溢れ、気持ちを上手に鼓舞させてくれる卒業式のスピーチ。
    生年月日を記載というのには私もびっくり。
    いかにも年功序列式、というか、順調に進級するのが当然、という前提にできあがったシステムで、
    それに当てはまらない人は目立ってしまう。みんなと違う。
    こういうのは止めて欲しいですね。
    例えば1年間だけ交換留学生で海外生活をし、日本に帰国したらみんなより1年分下。
    それだっていいでしょ。ね~。
    今回も色々考えさせてくれる記事、ありがとうございます。

    • Kyoko says:

      かぁちゃんさん、ありがとうございます!ずばり、「こういうのは止めて欲しいですね」は笑いましたが、私も同じように、事情があって遅れてしまった人はそのことを卒業式という場で暴露される、というか目立つことになるんだなーと思いました。正直なところ、観客はただ座って、自分の子供の番の時に写真を撮ろうと思って見ているだけなので、誕生日に注意を払っている人はあまりいないとは思いますが、それでもね、本人は当然それを認識させられますよね。まぁ日本の場合、問題があってもなくても進級するシステムになっているので、そのこと自体も問題なのかもしれないですが、それはまた別問題ですね。